発電所の「健康」も「体温測定」でわかる

発電所の「健康」も「体温測定」 でわかる

機械は、いずれ必ず故障します。だからたくさんの機械を詰め込んでいる発電所や工場やプラントも、必ず故障による操業停止という事態に見舞われます。
ところが発電所や工場やプラントが故障すると、人々の生活や経済活動に多大な影響を及ぼします。そこで各企業は、コストと時間をかけてメンテナンス(維持作業)を行っているのです。メンテナンスとは故障する前に機械を更新することなので、操業停止を回避できるのです。
富士通は発電所などの温度を測ることで故障を予知するシステムを開発しました。まるで体温を測定して健康状態を推測するような手法ですが、どのような仕組みなのでしょうか。

メンテナンスを最適化することの難しさ

メンテナンス イメージ

発電所などのメンテナンスには、膨大な量のチェック作業や手間のかかる部品交換、操業の計画的な一時停止などが必要です。これらはすぐにコスト高に直結します。
発電所などが生み出す利益は、生産性や効率化が影響しますが、メンテナンスコストも利益を直撃します。つまり生産性や効率化を上げても、メンテナンスコストで「ちゃら」になってしまう可能性もあるのです。
インフラなので十分なメンテナンスは欠かせないものの、事業として継続するための緻密な計画も非常に大事になってきます。
しかしこの予測が間違ってメンテナンスが遅れてしまうと、電気の生産がストップしたり不良品をつくることになったりして被害が大きくなります。そうなるとメンテナンスコストをはるかに上回るコストが必要になります。
現場の工場長や施設長は、日々神経をすり減らしながら最適化しようと努力し続けているのです。

予兆監視モデルfor光ファイバー温度測定 by富士通

光ファイバー

富士通が開発した「予兆監視モデルfor光ファイバー温度測定」(予兆監視システム)は、光ファイバーとAI(人工知能)を使って、機械や設備などの温度を24時間365日測定するシステムです。
また富士通の予兆監視システムは、従来の監視システムでは難しかった狭い場所にある機械の故障の検知もできるようになりました。

なぜ光ファイバーが必要なのか

光ファイバーは光を通す線です。電線が電気を通し、水道管が水を通すように、光ファイバーは細長い物体(線)を使って光を遠くに運ぶのです。
光ファイバーはインターネット回線でよく使われています。パソコンでつくった電子データを光の信号に変え、その光信号を光ファイバー内に流し込みます。光はこの世で最も速く進むので、光信号は瞬時に相手側のパソコンに届きます。
富士通の予兆監視システムは、発電所内の温度情報を光信号に変えて、その光信号を発電所などから監視している人のところに送るのです。
予兆監視システムでは、ラマン散乱光という特殊な光を使っています。ラマン散乱光に含まれる強度比と熱平衡という要素から、温度を推定することができるのです。
富士通の予兆監視システムでは、測定装置を故障の予兆を検知したい機械の近くに置き、光ファイバーをつなぎます。測定装置のなかにはラマン散乱光を発するレーザーがあり、そのレーザーは光ファイバーを通って機械に発射されます。
レーザーによってラマン散乱光を受けた機械は、そのラマン散乱光を反射します。反射されたラマン散乱光はやはり光ファイバー内を通って測定装置に届き、測定装置が機械の温度を推定します。
ここまでの流れをまとめるとこうなります。

・測定装置

・ラマン散乱光を機械に発射

・機械がラマン散乱光を反射

・反射されたラマン散乱光を測定装置が受信

・ラマン散乱光の強度比と熱平衡から機械の温度を推定

富士通の予兆監視システムで使っている光ファイバーは300度の高温環境下でも使えるもので、火災時にも温度測定を継続することができます。

なぜ温度を測定すると故障がわかるのか

温度 イメージ

機械の温度が高くなると「異常がある」と推測できるのは、日常生活でも経験できます。スマホ、冷蔵庫、自動車、こうした製品を使っていていつもより熱を持っていると感じたら、修理に出すと思います。
つまり機械は故障したり、故障しそうになったりすると熱を発してユーザーに知らせてくれるのです。

これは人が熱を出すメカニズムと似ています。炎症は、体の異変を熱で焼いてしまおうという現象です。例えば風邪で発熱するのは、風邪ウイルスを炎症で叩いているのです。
ただ人の発熱は、免疫システムによって起きる「自分で治す」仕組みですが、機械には免疫システムがないため、機械の発熱は単なる異常のサインです。

そして機械は、異常がないときも発熱します。例えば発電所は燃料を燃やして電気をつくっているので、機械もどんどん熱くなります。つまり発電所の機械の発熱は、正常稼働のサインでもあるのです。

そこで富士通は、機械の発熱のアルゴリズムに注目し、ある発熱アルゴリズムは異常のしるしであると判定し、別の発熱アルゴリズムは問題ないと認識することにしたのです。
ちなみにアルゴリズムとは、コンピュータで計算するときの「計算方法」のことです。または、物事を行うときの「やり方」と説明されることもあります。

富士通は、測定した温度分布のパターンから「いつもと異なる兆候(アノマリ、といいます)」を発見しました。つまり正常な発熱アルゴリズムから逸脱したものを、アノマリと判定するわけです。

光ファイバーを使った測定装置が「アノマリだ」と判断すれば警報が鳴って作業員が修理できる、というわけです。

なぜAIが必要なのか

AI イメージ

ここまでで、「光ファイバーを使った測定装置で機械の『体温』を測り、そこにアノマリ(異常の兆候)が見つかったら警報を鳴らす」のが、富士通の「予兆監視モデルfor光ファイバー温度測定」(予兆監視システム)であることがわかりました。
しかし実際に東北電力秋田発電所に設置された予兆監視システムは、複雑かつ高度な仕組みを持っています。なんと発電所内の燃料配管、蒸気配管、ボイラー煙道の計数kmを、10cm間隔で光ファイバーで測定することにしたのです。その結果、蒸気配管内で水蒸気が液化していることを発見できました。
そして予兆監視システムは、AIを使うことでさらに複雑かつ高度になりました。
富士通は「数kmにわたって10cm」としか公表していませんが、仮に数kmが3kmだったら、光ファイバーによる測定箇所は30,000箇所(=3km×1,000(1km=1,000m)×100(1m=100cm)÷10cm)に及びます。ということは30,000箇所のすべてに、正常な発熱アルゴリズムを設定し、アノマリ(異常の兆候)を探しているわけです。
AIは、大量の情報のなかから法則を見つけだすことができる技術です。またAIが一度、法則の発見に失敗しても、人が「それは失敗である」とAIに教えれば学習して次回は失敗しないようになります。
予兆監視システムに搭載したAIに、膨大な量の発熱アルゴリズム情報と過去のアノマリ情報を覚え込ませれば、故障の前兆を予測できるようになるわけです。そして東北電力秋田発電所がAI付き予兆監視システムを使い続ければ、故障の予測はますます正確になるのです。

まとめ

発電所や製造工場では、異常が起きそうになると高温になるので、温度の上がり方を測定すれば故障を予測できます。
しかし野菜工場はさらに微妙な温度変化の測定が求められます。富士通は福島県会津若松市に半導体工場を持っているのですが、そこのクリーンルームに野菜工場「会津若松Akisaiやさい工場」をつくりました。それは、半導体工場内の環境管理技術が、野菜工場の管理技術に応用できると考えたからです。
この野菜工場は「センサーだらけ」「測定だらけ」の工場です。そして温度、湿度、風量を徹底管理して、生育のばらつきを抑えることに成功しました。
ここで行われていることはいわば、ベテラン農家の脳(経験と勘)を野菜工場の頭脳への移植です。
「ベテラン農家は五感と情報で温度、湿度、風量を測定し栽培の段取りを組んでいるはず。大量のセンサーで集めた大量の情報をAIで解析すれば、ベテラン農家の農業を再現できるはずだ」というわけです。

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