オムロンとタニタは血圧測定を社員に義務化!

オムロンとタニタは血圧測定を 社員に義務化!

最近の企業は、社員の健康にとても敏感になっています。社員に健康診断を受けさせることはもちろんのこと、さまざまな健康施策を打ち出しています。
しかしオムロンとタニタほど、社員の健康管理を徹底している企業は多くないでしょう。両社は社員全員に定期的な血圧測定を義務化し、タニタに至ってはそれを怠った社員の名前を食堂に張り出すことまでします。
オムロンもタニタも血圧計をつくっているので、血圧測定ブームを起こそうとしているのでしょうか。血圧測定は健康管理で欠かせないだけでなく、体に負担を与えない優れた検査方法なのです。血圧と血圧測定と最新の血圧計についてみていきましょう。

高血圧が引き起こす病気は怖い

血圧 検査

血圧は、血管の中を通過している血液が血管を押している力です。ゴムホースの中を通過する水がゴムホースを押す水圧と同じです。
「高血圧は恐い」といわれますが、実は高血圧自体は痛みも体調不良も起こしません。恐いのは、高血圧の後に出てくる病気です。
例えば買ったばかりのゴムホースは軟らかく弾力性がありよくしなりますが、10年20年と使っているとゴムが硬化して折り曲げるとヒビが入ったり割れたりします。血管もゴムホースと同じように、長年使っていると(長年生きていると)硬化して壊れやすくなるのです。その状態を動脈硬化といいます。
しかも血圧が高くなって血液が血管を押す力が強くなると、血管はさらにダメージを受けます。高齢者でなくても動脈硬化を起こすのは、高血圧のせいです。そして動脈硬化になると、死の病であるくも膜下出血や心筋梗塞、腎不全のリスクが急上昇するのです。
毎日血圧を測って高血圧の兆候をつかむことができれば、野菜の多い食事にしたり運動したり、または血圧を下げる治療に取りかかることもできます。血圧測定は、死の病を回避するための健康習慣といえます。

なぜ血管内の血液の圧力を測定することができるのか

血圧 測定器

最新の血圧計の「すごさ」を知るには、血圧測定のそもそもの仕組みについて知っておいたほうがいいでしょう。

110年前に完成していた

血圧測定の仕組みが確立したのは約110年前の1905年です。ロシアの医師コロトコフ氏が、カフという帯で上腕(腕の肩に近い部分)を巻いて動脈を圧迫し、このとき動脈内の血液が動脈を押す力を測定する方法を開発したのです。
これは現代の病院で行われている血圧の測定方法と同じで、つまり血圧測定は「デビュー当時」から完成していたのです。しかも血圧測定は、対象者に針を刺したり(血液検査)、放射線を浴びせたり(CT、レントゲン検査)する必要がありません。
血液が動脈を押す圧力は、水銀計で計測します。血圧の単位は「mmHg」で、Hgは水銀の元素記号です。「血圧が100mmHg」は、水銀計のなかの水銀が100mm(10センチ)上昇したことを意味しています。

最高血圧と最低血圧はコロトコフ音で判定する

病院で医師や看護師に血圧を測ってもらうとき、カフのなかに聴診器が差し込まれます。これは血液の流れる音を聞いているのです。
カフで上腕の動脈を圧迫し、その後緩めていくと、血管から「とんとん」という音が聴こえてきます。「とんとん」が聴こえ始めたときの血圧(水銀計の数値)が、最高血圧になります。カフをさらに緩めると「とんとん」という音が消えます。音が消えたときの血圧が最低血圧です。
この「とんとん」は心拍の音で、コロトコフ音(血管音)といいます。

オムロンの血圧計と健康の取り組み

健康診断 イメージ

オムロンは電子血圧計をいち早く開発したメーカーの1つです。オムロンの血圧計開発の歴史からみていきましょう。

電子血圧計の進化

オムロンは1973年に、マイクロフォンという装置でコロトコフ音を拾う血圧計をつくりました。医師や看護師がカフに聴診器を挿入しなくてよくなったのです。さらにこのとき、圧力計(マノメータ)で血圧の値を測ることにしました。水銀は有害物質なので、血圧計の安全性が格段に向上しました。
さらにオムロンは1981年に、カフを膨らませる加圧も自動で行う血圧計を販売しました。全自動にかなり近づいた製品といえるでしょう。
画期的だったのはその次に開発した、オシロメトリック法による血圧測定でした。
カフで上腕の動脈を圧迫するまではコロトコフ音方式と同じなのですが、オシロメトリック法はこのとき、血管壁に生じる振動(脈波)を測定するのです。
カフを加圧してその後減圧すると脈波が急激に大きくなり、このときの血圧の値が最高血圧になります。さらに減圧すると脈波が急激に小さくなり、このときが最低血圧になります。
オシロメトリック法では、コロトコフ音を採取するマイクロフォンが不要になるので、血圧計の構造がシンプルになり軽量化できます。
オシロメトリック法により、血圧計は軽量化、小型化、高性能化、安価化が進みました。今日、血圧を簡単に計測できるのは、こうした技術革新のたまものなのです。

オムロンの徹底ぶり

オムロンの子会社に、血圧計などの医療機器をつくるオムロンヘルスケアがあるのですが、この会社が全社員に毎日血圧測定することを義務化しました。同社は社員650人全員に、オムロンの最新血圧計「HEM7600T」を無料配布しました。この機種の店頭価格は約2万円ですので、1,300万円の投資です。
国内ビジネスシーンに「健康経営」という言葉が生まれ、会社が社員の健康に責任を持たなければならない機運が高まっていますが、オムロンヘルスケアにはもう1つ別の狙いがあります。
それは血圧計のIoT(ネットとモノ)化とデータビジネスです。
血圧の値は測りっぱなしではあまり意味がなく、血圧測定を健康づくりにつなげるには、長期間にわたって上昇傾向をとらえる必要があります。血圧計が進化して測定は簡単になりましたが、血圧値を記録することは面倒です。
そこでオムロンでは、血圧計とスマホやパソコンをネット接続し、測定したら自動的にクラウドに記録できるようにしたのです。
クラウドに血圧データを集めることができると、そのほかの医療データと組み合わせることで、くも膜下出血や心筋梗塞など、高血圧に起因する重大な病気の予防や治療に役立てることができます。

機器づくりだけでなく、データビジネスにも拡大

オムロンがデータ集めに躍起になるのは、ある危機感があるからです。オムロンの血圧計の累計販売台数は2016年に2億台に達しました。もちろん国内トップシェアです。しかし血圧計市場は飽和状態になっていて、今後の需要拡大が見込めません。

そこでオムロンは、血圧計などの医療機器を次々ネットにつなげ、データを収集することを思いついたわけです。

AI(人工知能)医療が進めば、ビッグデータがますます必要になってきます。今後医療界でも、データを多く持っている企業が躍進するようになるでしょう。他産業ではすでにデータビジネスが盛んです。

またオムロンは世界初の腕時計型血圧計を開発しました。腕時計サイズまで小型化すると、長期間にわたって血圧を測ることができます。腕時計型血圧計をネットにつないで医療機関でモニターできると、危険な数値に達したときに医師たちが注意を促すことができます。遠隔医療が可能になるわけです。

計測機器メーカーのオムロンは、「測って終わり」「売って終わり」のビジネスから脱却し、データを集めて分析したり、遠隔医療を支援したりすることでビジネスを拡大させようとしているのです。

食堂に張り出すタニタ

食堂 イメージ

オムロンヘルスケアは、社員が毎日の血圧測定をサボっても「罰」はありません。しかし同じく健康機器メーカーのタニタは、血圧測定などを1カ月以上怠った社員は食堂に名前を掲示されてしまうのです。
タニタの健康経営は歴史があり、2009年から全400人の社員のメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)ゼロ運動を展開しています。
全社員に活動量計を配布し、社員は定期的に社内のデータ収集機器に、活動量計のデータを入力していかなければなりません。歩数競争イベントでは、成績優秀者も食堂に名前が張り出されます。
タニタが考える新ビジネスのキーワードは「健康コスト」です。社員が不健康になって病気になると生産性が落ちるとともに会社は医療費を負担しなければなりません。
つまり社員の「尻を叩いて」健康増進を達成すれば、生産性も向上するし医療費負担も減るのです。タニタとしては一挙両得です。タニタでは、メタボゼロ運動を始めてから会社が負担する医療費は9%減ったそうです。
大企業が負担する従業員の医療費は10年前より2割増えているそうです。当然、国の医療保険制度の財政にも悪影響を及ぼしています。社員を健康にすることは社会的な課題といえます。

まとめ~不健康コストを減らす血圧測定ビジネス

「不健康」は、健康を害した本人、企業、国の3者を同時に不幸にする「無駄なコスト」です。そのため、オムロンやタニタの血圧測定ビジネスが盛り上がると、健康機器メーカーが儲かるだけでなく、社員や国の財政にもよい効果をもたらします。「健康を測る」ことは、幸せを増やすこともであるのです。

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ライター紹介
ライタープロフィール
アサオカミツヒサ

フリーライター、ライティング事務所office Howardsend代表。北海道大学法学部を卒業後、鉄鋼メーカー、マスコミ、病院広報などを経て2017年独立。取材した分野は、地方政治、地方経済、過疎化、ワーキングプアなど。現在の執筆領域はIoT、AI、産業一般、人事制度、金融、最新抗がん剤、生活習慣病治療など。趣味はクルマとバイクと登山。北海道釧路市在住。

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